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本の紹介「朽ちていった命—被曝治療83日間の記録」

DATE:09-11-26 Category:Books

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「臨界事故 男性被爆」そんなニュースの見出しに隠された壮絶な戦いのドキュメントです。

1999年9月に起きた臨界事故。
部外者の僕らからしたら「放射能って恐ろしい」で終わってしまう事故の裏では、壮絶な戦い続けた被害者、支え続けた家族、最後まで諦めなかった医療関係者達の物語があります。

この本はその83日間記録の記録を綴っています。

 バケツ七杯目。最後のウラン溶液を同僚が流し始めたとき、大内はパシッという音とともに青い光を見た。
臨界に達したときに放たれる「チェレンコフの光」だった。その瞬間、放射線のなかでももっともエネルギーの大きい中性子線が大内たちの体を突き抜けた。
 被曝したのだった。

一瞬の青い光を見た瞬間、彼らの運命が大きく変わってしまいます。

放射線を浴び「生命の設計図」である染色体が壊れ、体中の細胞が再生をしなくなります。
彼らの体はタイトル通りに、「朽ちていく」ことになります。

病院に運ばれた際はどこも悪いところがないように見えた被害者も、日を追うごとに身体への影響が出始めます。

まず症状が出たのは皮膚だった。
 胸に貼った医療用のテープをはがすと、テープを貼った部分の皮膚が、そのままくっついて、取れてしまうようになった。テープをはがした跡は、消えなかった。
 被曝して一ヶ月後に撮影された右手の写真では、皮膚のほとんどがなくなり、手の表面は大火傷をしたようにじゅくじゅくして赤黒く変色していた。

代謝によって、入れ替わるはずの皮膚すら再生することはありません。
皮膚だけでなく、内蔵にも影響が出始め、栄養の吸収できなくなった腸の代わりに点滴での栄養補給を行う事になります。

最終的には声も失い、意識レベルも低下してきます。

そんな中で、医療チームは完治することのない戦い続け、少しずつ心身ともに疲労していきます。

 山口は、自分のやっていることが実際に誰の幸せや喜びにつながっているのかが、わからなくなっていた。
〜中略〜
助かる見込みが非常に低いという状況のなかで、日に日に患者の姿が見るも無惨な姿になっていく。その患者の治療に膨大な医療品や血液などの医療資源が使われていく。しかし、そうしておこなった処置は患者に苦痛を与えているのだ。
 看護婦たちの間にも動揺が広がっていた。
〜中略〜
 体の全面の皮膚はほとんど失われ、口からも腸からも出欠している。そうして失った血液や体液を自分たちはひたすら補充する。もしかしたら「治療」という名のもとに、大内たちはこういう状態をつづけさせられているのではないか。

しかし、このような医師たちの迷いを断ち切るのは、やはり被害者の家族でした。

妻は言葉を語れない大内のそばに寄り添って、手をさわったり、包帯から出ている足先をさわったりしていた。ときどき笑いながら語りかけていた。看護婦のだれ一人として大内の前で泣く妻の姿を見たことがなかった。
 父親は「久、来たぞ」と語りかけ、泣いた。毎日毎日、名前をやさしくよび、包帯とガーゼで覆われた顔を見つめていた。かたわらには母親が寄り添っていた。

すべての関係者が戦い続けます。
突然の心停止があれば蘇生処置を行い、命を繋ぎ止めようとします。
しかし、ついに打つ手がなくなり、次回の蘇生処置は行わない事を家族と共に決定することになります。

1999年12月21日午後11時21分。
大内久、死亡。
享年35歳だった。

たった一瞬の「光」に包まれ、外傷も何もなかった35歳の男性が、全身を破壊されるように亡くなりました。
放射線は目に見えなく、匂いもなく、ほとんどの人が意識することなく生活しています。

しかし、放射線の前では現代の医療はまったく無力なのです。

放射線の恐ろしさは、人知の及ぶところではなかった。 〜中略〜
そのとんでもないことにたいして、一介の医師が何をしてもどうしようもない。どんな最新の技術や機器をもってしても、とても太刀打ちできない。その破壊的な影響力の前では、人の命は本当にか細い。

この本は、読み終わったあと脱力してしまうほどのパワーがあります。
それだけ、この事故は悲惨であり、関係者たちの戦いは壮絶です。

事故などのニュースは、テレビなどを見ただけでは、どうしても自分とは関係のないという無意識の中、一つの情報で終わってしまいます。
このような本を読んで、ニュースの裏にある戦いを知るのも大切なことではないでしょうか。

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